目覚めるともう京都

この前、関西に来たのはいつだっけ…。京都でも遊びたいが、がまん。
第一の目的地に到着。まだ8時過ぎ。早すぎる。どっか入って朝ごはんを食べようと思ったが、土地勘がなくふらふらする。駅近くのショッピングモールに行ったが開店前。そこで方向転換して繁華街というより商店街といった趣のメインストリートへ。散見するファーストフード店は9時10時オ−プンの表示、ってマジで?仕方なしに目に付いた喫茶店に入ってモーニングを注文する。
以前も一度入ったことがある店。そのときも、座るところを求めて彷徨ってたんだよなあ。わたしのほかに、客は一人。80歳近いじいさん。コーヒーを飲んで新聞を広げる。わたしも倣ってラックから新聞を取る。内装は冴えないけど、うちの母ちゃんくらいの歳のママが丁寧に仕事をしている。豆は一杯ずつ挽いて、手ずからドリップをしてくれる。こんがり焼けた厚切りのパンに丁寧にバターを塗っているナイフの音がする。木のプレートに、ゆで卵、トースト、ミニサラダ。陶製の塩の瓶のプリントがなにやら懐かしい絵柄。でも、塩は気持ちよくさらさら。タイムスリップしたかのような驚きの懐かしさ。店を出る客には「行ってらっしゃい」とママが声をかけて送り出す。ママは擬似母ちゃんだな。
丁寧なんだけど、ダサい。でもおいしい。5分に1人くらい客が増えるペース。みな中年以上の男の人だ。ママに挨拶する感じから常連らしい。何かしていないと間が持たなくて新聞をビックコミックオリジナルに変える。まだまだ予定時間までは間がある。せっかくイスがあるここで粘らねばらないのだが、いかにせん暇なので、マンガを読みながらトーストをちびちびかじる。
5人目の客がきた。下膨れの丸顔にたっぷりの半袖ダンガリーシャツをボタンを留めて裾出し。横隔膜直下から腹が出ているのかシャツはベル型に裾が広がっている。微妙な太さのジーパンをはき、男にしては長めの、女にしては短めの緩い天パ髪。直感で、ぽっちゃりしたおじさんだと思った。私の席のイス一個間隔をあけた右隣、かぎ型定規みたいな形のカウンターの一番隅、かぎに曲がった部分に迷わず座る。定位置らしきポジション。他の席より卓面が広く使える一等地。ママとの話し振りは常連に違いない。が、その声、ちょい早口で高め。アジアン?…いや、良く聞くと日本語。おばちゃんや。うわ。貧相な体のわたしが言うのもなんだが、胸より腹が出ていたせいで性別不明のシルエットになっていたらしい。おもしろ。
おばちゃんはモーニングを注文し、席を立ってわたしの右隣三個先のイスに座っているこれまた主みたいなおじいさんのところに歩み寄る。「これ、貸してください。」八分の一にたたんだ朝日新聞におばちゃんが手を伸ばすと、爺さんはすばやく無駄のない動きでピシャンと新聞を押さえ一瞥した。頂上決戦の趣。火花散ったよ(笑)。おじいさん、それ読んでないじゃん。しかも今、日刊スポーツ読んでるじゃん!…譲りたくはないってことか。おばちゃんは無言のまま引き下がり、あきらめてラックから違う新聞を手に取り席に戻った。
2人とも常連みたいなのに、仲悪っ!
そのやり取りに、笑いが止まらなくなりそうだったんで思わず席を立ってしまった。ああ、またイスを求めて彷徨わなければ*1。支払いを済ませて店を出るわたしにママは「行ってらっしゃい」と声をかけてくれた。うれしいような、トホホなような。複雑な気分。

*1:その後、6時から開いているマクドを発見、喫茶店もなんぼでもあった。腹減っていて判断力なかったんか、わし