もう春だな

めっきり暖かくなった。
黄砂が吹き、ゆすりかが蚊柱を作る頃になると、あー、春だなあと感じる。
小学生の頃についで、暇がたっぷりあった学生時代の記憶なんだけど、思いのほか濃い印象で毎春よみがえる春のイメージになっている。*1美しくないなあ。
卒業して郷里に帰る大学院生の先輩を同居人と争っていた春の記憶だ。ドロドロだ。美しくないなあ,ほんとに。
黄砂で埃っぽいのに窓を開け、二階の窓に腰掛けて通りを見下ろしていた。
夕方近い時刻。迫りつつある夕闇なのか、黄砂なのかわからない薄ぼんやりとした空気。羽化したゆすりかが水路の上に群れをなしているのが見える。
つまらんなー。早く来ないかなー。
隣ではきっと同居人も同じことをしている。貧乏学生のわたしたちは、先輩が迎えに来てくれるのを待っていた。そのときの景色だ。

三人で、先輩の菜の花色の古い車で、でっかい砂丘に行った。わたしは同居人と砂浜でじゃれあい、先輩は遠くでわたしたちを見ていた。
同居人はきれいな貝と流木を拾っが、わたしは眼鏡を失くした。
結果も同じだ。同居人は先輩を得たが、わたしは叶わなかった。
毎年、思い出したくもないが、条件反射でよみがえるのよ。諸々の後悔とともにね。
あー、春だなあ。

よく考えたら、冬真っ盛りの頃からドロドロしてたな。今考えると、怖い人かも、わたし。
そのドロドロの記憶の中で、ブレイクとしてあったのが砂丘へのドライブだった。
一条の光だったから、美しくないのに、毎春思い出すのかもね。

*1:この記憶と対になるのが、空気が冷たくなった朝の頬が引き締まる感じに、あー、冬ねーとハイになる。