ジャケ買い!

『噂の男』渋谷・パルコ劇場8月20日マチネ 1幕 休憩なし 150分
いやーな男たちの、いやーなお話。
「見たい!」と思ったとき、ストーリーについてあまり考えなかった。予備知識は芸人が出てきて、劇場が舞台で、いや〜な話ってことだけ。絶対何か面白いことがあるはずだと、チラシをを見て確信。いわばジャケ買い
そういう夢を抱かせてくれた夢のような布陣
パンフレットに、キャストの方々が「スター、ヒロインがいない分、決定打に欠ける」と、チケットの売れ行きを心配してたと書いてあったけど、そんな訳なく、即完売。
■作: 福島三郎
■潤色・演出: ケラリーノ・サンドロヴィッチ
■キャスト

■スタッフ

  • 美術: 小松信雄
  • 照明: 関口裕二
  • 音響: 水越桂一
  • 衣裳: 前田文子
  • ヘアメイク: 河村陽子
  • 映像: 冨田中理

あらすじは以下の通り(ホームページより転載)

時は現在。
場所は大阪にある宝田興業の持ち小屋、昭和の戦後に建てられた、宝田グランド劇場。
その舞台袖、地下にある『ボイラー室』と呼ばれる一室。
そこを訪れる、芸人たちとそれをとりまく人々。

鈴木光明 宝田興業のエリート社員。宝田グランド劇場支配人。
モッシャン 宝田興業所属の漫才コンビ“パンストキッチン”のツッコミだったが、相方のアキラに先立たれ、今は酒びたりの日々。
加藤信夫 ボイラー室の整備のためにやって来た、ボイラー技師。
ボンちゃん 宝田興業所属の売り出し中ピン芸人
アキラ “パンストキッチン”のボケで、モッシャンの相方。12年前に他界。
骨なしポテト
(トシ&アヤメ) 宝田興業所属の中堅夫婦お笑いコンビ。
    
五人の男と一人の女、そして一人の幽霊(?)が集まって、やがて露呈するそれぞれの思惑・・・。そして12年前、アキラの死の直前に一体何があったのか・・?過去と現在を行き来しながら、物語は意外な方向へと展開していく・・・。

興味があっても演目が気に入らなかったりタイミングが合わなかったりで、なかなか目にすることができない俳優をいっぺんに見れたことが一番の大収穫。
エロも暴力も狂気もある、確かにいやな話であったけど、それほど気にならなかったのは、癖も裏もある男たちを演じる役者がよかったからなんだろう。劇の運びの軽重、登場人物の性格の表裏、劇場という場の明暗、人が死んでもShow must goes on。俺の人生も終わらない。すげえエゴの世界。売れっ子で周りを振り回す理不尽キャラから転じて、わけもわからず回りに巻き込まれていく山内圭哉ボンちゃんなんかかわいいほう。橋本じゅんモッシャンのひねキャラとボケジジイ、橋本さとしアキラの温厚な面と利己的な残酷。八嶋智人ボイラーマンの明るいお笑い好きからの変貌。堺雅人支配人の現在と青年時代とそれぞれの立場時代の裏表。骨なしポテトの猪岐英人、水野顕子も実にいい塩梅で効いている。「こうするしか仕方がなかった」なんて泣きの必然の一切ないエゴの世界。歯車が最悪の方向に狂っていく。役者陣、かっこいい。
個人的には、好きになれないだろうなあ、と思っていた堺雅人が意外とよかった。最年少だからかのびのびと笑顔で狂気を注入。モッシャンの台詞、「全ての喜怒哀楽を笑顔で表現する男」に大爆笑。個人的には紅一点水野がよかったな。
夏のパルコは怖いって噂、宮藤官九郎鈍獣』、長塚圭史『LAST SHOW』、KERA『噂の男』。続くねえ。