アンコールが3回

ってくらもちふさこのマンガじゃないよ。
熱海五郎一座『楽曲争奪ミュージカル「静かなるドンチャン騒ぎ」』千秋楽
'04・'05年と東京の軽演劇を見せ、大人気を博した「伊東四朗一座」。“伊東ならぬ熱海、四朗ではなく五郎”ということで、東京喜劇を伝承するべく座長・三宅裕司のもと、渡辺正行ラサール石井ら達者な役者を配した喜劇と聞いたら、どう考えても行くしかないでしょ。次は劇場の関係で2年度というし。
楽しかったな。
指定席だったので、舶来市場をぶらぶらしていて、イギリスコーナーにはまっていたら、5分前!バタバタと飛び込んで席を探すと、SETのお姉さんたちが各国のサッカーのユニフォームで飛び出してきたところだった。危ない危ない。東MAXはジダンに扮してくすだまを割っていた。斜め前に座ってた男性が、ラジベガスの話を隣の連れにする。聞いてる人がおるんやな。三宅さんの上演前の案内と諸注意*1で一笑い。客電が落ち、開演。マチネがWOWOW生中継*2だったから、千秋楽ははじけるといいんだが、生中継で燃え尽きてぐだぐだになりそうでちょっと不安。

由利組の若衆がいる事務所に、敵対する佐倉組の角田を連れて銀次が入ってくる。なんと、組長が刺客の角田に殺されたというのだ。由利組幹部の英は組長の死の一部始終を調べ、医者を巻き込み本当の死因を隠蔽し、すべての罪を角田に着せる。そんな折、角田が由利組から逃走する。英は事件の証拠となる角田の指紋付きのハジキを持っており、角田を渡すように佐倉組に告げる。それと共に、由利組長の一人娘であることを隠して、タレント活動をしているある円城寺綾に父の死を伝える。父の死にショックを受ける綾、そしてその犯人が実は、結婚を約束したはずの角田である事に戸惑う綾。事件の真相は、明らかにならぬまま、角田を返さなかった佐倉組と、父の仇を討つため二代目を継ぐ事を決めた綾が率いる由利組の全面抗争がいよいよ始まる…抗争の結末は… 角田と綾の関係は… 組長の死の真相とは…?

生放送したから問題ないとは思いますが、以下ネタバレあります。
冒頭のレストランのシーン、婚約指輪を渡すために角田(東貴博)が仕込んだミュージカル俳優を従えて、綾(辺見えみり)が歌いだしたときは、辺見えみりの見事な歌いっぷりとミュージカルっぽい群舞にちょっと驚いたが、「あなたは(はあと)?」と投げかけられた東MAXが颯爽と立ち上がり、すごすごと席に戻る様子に、「歌カットだ」と拍手喝采。紗幕で仕切られた舞台に自転車で蕎麦屋の出前持が自転車で乗り込み、出前先が組み事務所と状況説明。これがないと次に出てくる人のよさそうな顔をした面々は、派手な服をしたおじさんにしか見えなかったかも。
先代組長(伊東四郎)の遺影が飾られる由利組事務所。若頭英(三宅裕司)、銀二(小倉久寛)、蕎麦屋に催促の電話を入れるが、ぺこぺこしてしまう若い衆(タカ)*3。短い手足を振り回してカッコよくヤクザのいろはを教えようとした銀二もカット。遅れてきた蕎麦屋「更科」の出前持・ちょうじゅあんさぶ(トシ)*4は大のお笑い好きが高じてやくざにツッコミを入れていしまったなりゆきで、(勝手に)店を止めて組のために働くことにする。
そうこうしていると佐倉組の若頭(渡辺正行)が「待たせたな〜」で登場。往年の兄貴ばりに目のまわりはラメラメ*5。組長のふりをした若頭が何もないと安全を確かめた上で、佐倉組組長(ラサール石井)登場。ちんちくりんがストライプのスーツに引きずりそうな長いマフラー。低音ですごんでいるが大きな音がすると少女のようの驚く組長。一暴れした後の白いマフラーの按配をまわりにいじられていたのが面白かった。小さいおじさんは舞台で見ると面白いなあ。大事な手打ちの日に由利組の組長が不在なので、佐倉組一同は怒って帰ってしまった。
愛人宅にいる組長を若い衆に迎えに行かせたると、愛人・レイコから電話がかかってきた*6。組長が死んだという。偶然マンションに居合わせた佐倉組の角田が由利組事務所に連れてこられる。電話で玲子に確認すると、組長は鉄砲玉の角田に殺されたのではなく、驚いてソファー飛び越えようとして鴨居にぶっつかって「げっ」つって首の骨折って死んでしまったとのことだ。この、不名誉な組長の死を隠蔽するために、英は角田に罪をかぶせるたくらみをする。まんまとおばかな手に乗り、角田は銃を握り死体に弾を撃ち込んでしまった。捏造した証拠の品を握り、何でもいうことを聞いてくれるズバコロピタの先生不在のため、その息子堅物のガリカタキッチ(?)ぜんざいゴロン(春風亭昇太)*7を脅して死因を曲げさせる手術をさせた。お嬢さん=綾と恋人角田のために手打ちまでこぎつけた由利組と佐倉組は全面抗争は避けられない状況になる。ちなみにここまで誰も歌をまともに発表できてはおりません。*8
綾に父親の訃報と犯人が角田だと伝えるために、銀二が綾の楽屋にぬいぐるみをかぶって訪れる*9。動揺したまま綾は「おらの泉」に出演。美輪明宏を演じるのは渡辺正行、江原を演じるのはラサール石井国分太一*10春風亭昇太。いわずと知れたテレビ朝日の某番組のパロディ。ラサールの動きは江原氏にかなり似ている。しかし圧巻は渡辺正行でしょう。嬉々として美輪御大のまねをしていた…、いや、なんか違う別の新しい妖怪みたい。ロバート・デ・ニーロアル・カポネを降霊したり、ジェイソンを(架空の人物なのに)降霊したり、やりたい放題。女好きで涙もろいおじさんという認識になりかかっていた最近のわたしの渡辺正行観を吹き飛ばす*11、芸人っぷりを見せていただきました。腹よじれるくらい笑った。あの中、一人でまじめに演技して、歌ってた辺見えみり、えらいぞ。
佐倉組では、だまされやすい若頭ことリーダーが美輪さんで弾みがついて更に自由にぼけ倒す。鴨居に頭をぶつけるなんてことが可能か実証するために鴨居に見立てたナベさんの腕*12にジャンプする角田。リラックスのくだりで、「東八郎…、知らねえな。」など、お父さんネタも出た。組長も手を焼きながら、馬鹿みたいに単純な策にはまった角田を匿うことに決め、二つの組は全面抗争に突入する。
由利組は、三代目をあやが継ぎ、長ドスを持って参戦。チャンバラはお祭りみたいなもんだね。派手で楽しい。華麗な殺陣をこなす三宅さんかっこいい。佐倉組組長と由利組若い衆の睨み合いはご愛嬌。タカアンドトシもぎこちないが殺陣をがんばる。ここでやっと岡持が木の理由がわかった。重いと振り回せないもんね。SET大活躍。昇太の落語はなんだったのだろう。わかった?自分の身の危険も顧みず、戦いに駆けつける角田。切りまくった綾だが、実はドスの歯はつぶれていて、みねうちですんだので一件落着。いいところで三宅さんがむせちゃったら、倒れてたナベさん笑うし。
綾と角田の披露宴がエンディング。二人の生い立ちの写真から、新郎新婦の職場仲間からの歌のお祝い「夢で逢えたら」。楽曲カットもやむをえない歌唱力を披露。きれいなラストだった。
最後になったけど、紗幕と廻舞台を使ったセットチェンジがシンプルだけど秀逸だった。両組事務所は同じセットに小道具で変化をつけていたんだが、それも笑えた。銀二が楽屋を出て、スタジオまで迷い込んでしまうところなど、上手いなあと思った。ゲネプロでどのパネルが倒れたんだかわかんないけど、大変だったね。でも、良く働くいいセットだったよ。最後に引き戸が建付け悪くなったのは仕方ないけど、これもラサールが笑いにもってった。紗幕で区切られた舞台鼻には花道的効果があって、道行っぽかった。せり上がりで登場した着物の彩も演歌歌手みたいにゴージャスでかっこよかった。殺陣のシーンの幕もスピード感とずっこけを演出していて面白い使い方だった。
今日は楽日なので、カーテンコールもサービス。今日はえみりさんもはっぴ着て舞台にいました。楽日だもんね。にこにこ人のよさそうな笑顔ではっぴで勢ぞろいしていると温泉旅館の従業員みたい。熱海公演もなんて話も2日目にはしていたね。3回まで幕が開いた。2回目はラサールさんのカットされた曲が披露された。3回目は、客電つけてみんなで手打ち。小指から一本ずつ指を増やして5本締め。あー、楽しかった。次は2年後なんだって。

*1:稽古中の歌の出来次第で出演者が曲を手に入れる〈楽曲争奪ミュージカル〉の趣向。歌が下手な役者は出番が減る!?

*2:軽演劇の舞台の生中継って、昔のステージコントのTV放送みたいで懐かしいですよね。

*3:ピスタチオと言われていた

*4:さるげっちゅと言われていた

*5:2日目はうけてたが、楽日はすべった

*6:銀二の着メロに仕掛けあり

*7:挙動不審だと思ったら、落語の癖で上下切らないと喋れないのだと二日目の挨拶で発覚。

*8:ちょっときついように思えたタカトシも果敢に突っ込んでがんばっていた。見せ方はいまいちだったが、初演劇だそうだから

*9:サルかゴリラ、オグちゃん風に髭が濃いぬいぐるみ

*10:楽日は極太タイツと発音していたようだけど。昇太の国分太一観がわかる、というより見たことないんじゃないかというほどのバカ演技。ジャニーズ敵にまわす?

*11:若手お笑い芸人の育成に積極的で、1986年から「ラ・ママ新人コント大会」を主宰していたという側面など忘れそうになっていたよ。所属事務所の枠を取り払ったお笑いライブで、過去にはウッチャンナンチャンダチョウ倶楽部爆笑問題海砂利水魚ら、現在活躍するお笑い芸人たちも多数出演してた。今考えるとすごいメンバー。

*12:欄間も表現!!